第14話/メディア


主な話者:うさぎ、トゥラルパン

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どこのチャンネルでも同じ映像の国と、同じ映像ではない国(尾長鳥の国)

“暴力の匂い”…“絶対に灰色のご機嫌をそこねない放送を。”

沼の原でも、どのチャンネルも同じ映像を映し出していた。トゥラルパンは、“まずーい感じ”に気づいて、今後の展開に目を凝らしています。



テレビカメラのケーブルを必死の形相で巻き取り、遅れたためにカメラマンにみぞおちを蹴り上げられるアシスタントの描写が出てくる。著者が以前実際に目にしていた光景なんだろうなと思う。

テレビの世界は厳しいと聞く。階級がはっきりとしていて、下積み時代の厳しさは他にないほどだと聞く。

そこで成功を収めれば名声が約束される。


景色を切り取り、声を編集し、加工され、テロップが詰め込まれ、画面の中にもうひとつ画面の窓がつけられ、ばらばらに分解されてからつなぎ合わせて作られる映像。

そこに方向性がないわけがない。


少し前まで、今日のような激しいテロップ(テレビの画面の中につけられる文章、単語)はなかったのに。

画面を見ていると、文字がめまぐるしく押し寄せてくる。それで、右下か右上に小さな窓が出ていて、有名人の表情(その放送を見ての反応を示す)が映し出される。

間違いない方向に視聴者を導くために。必ず「ここでどっと笑わせる」ために。同じように感じさせるために。


あまり見ていない人には、いい番組を見つけ出すことも難しい。


テレビがついているときの子どもたちの釘付けっぷりもすごい。

テレビがついていると、画面に釘付けになり、自由に遊ぶこともできなくなる。ぐったりとソファに横たわって、目をテレビに縛られている。

見ていてこわいくらいだ。

子ども向けの番組でなくてもそうなんだ。CMの音にいちいち反応し、変な言動をする芸人さんを見て異常な笑い声をあげる。

テレビがついていると子どもは普通でなくなる。何もしゃべらなくなり、動かなくなる。

魂を抜かれているみたいだ、と思う。

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